ワンダールームシェア

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「あれ?」  ドアは開かなかった。鍵を開けたり閉めたりしても、ドアノブを何度回しても、思いっきり体当りしても、ドアはびくとも動いてくれない。  壊れたのか。修理の業者を呼ばないと。いや、先に大家さんか。ああ、その前に会社に連絡しなくちゃと半ばパニックでドアを睨みつけたまま立ち尽くす。 「ああ、それ、そういうモノみたい」 「そういうもの?」 「うん。そういうモノ。開かないの」  説明を求めたつもりなのに、シズナは何も教えてくれない。 「そっか」  それだけ呟くと、寝起きに忙しなく動いた反動かどっと疲れが押し寄せてきた私は、フラフラとリビングまで歩いていき、そこで力尽きて床に寝転がった。芋虫みたいに。  外に出られないのなら、会社に行けない。仕方ない。だって、そういうものだもの。今日は休み。連絡は……向こうがしてきたら返そう。 「良いの? 大人なのに仕事行かなくて?」  すぐ傍にしゃがんだシズナが顔を覗き込んでくる。 「大人にも色々あるのよ」 「大人も大変ですねー」 「大変なんですよー」  言いながらスズナがふざけたようにニヤニヤとしていたので、二人してクスクスと笑った。身体中の力が弛緩して、今なら気持ちよく二度寝できそう。 「死にたいくらい大変?」  急に真面目な口調で言うから、私はうつらうつらとしていた目を開く。シズナは少しもふざけていなくて、どこか優しい表情をしていた。 「あー、いや、どうなんだろう。わかんない」  曖昧に私は答える。シズナは「そっか」と少しだけ目を細めた。  ここ最近、仕事で失敗し続けていて、どんどん会社での肩身は狭くなっている。その上、明るい性格でもなく、人に好かれる質でもない私は会社で孤立しつつある。居場所がないといっても過言じゃない。  でも、それが死ぬほどのことかと問われれば、よく分からない。気分が落ち込んでいる時に問われれば死ぬと答えるだろうし、明るい時に問われれば死なないと答える。そんな感じ。  ただ、生きている私以上に明るく、死んだことに微塵も後悔を見せないシズナを見ていると、死ぬのも悪くないと思えてしまうから困る。 「ならさ」何かを思い立ったように膝を打ち、シズナは立ち上がる「時間があるなら、友達を紹介していい?」 「友達?」
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