⑤捜索隊の帰還

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

⑤捜索隊の帰還

 事件としては、一件落着したわけだが、生徒指導主事の大野原先生が何やら彼女に話をしていた。神妙な顔つきでその話を聞く水木さん。 「生徒指導のつらいとこだな。水木さんは、子犬を助けようと良いことをしたんだけどな。彼女の後先を考えずにとった行動は、場合によっては彼女自身の命を危険にさらすことになったからね」  その姿を遠目に見て織田先生はつぶやく。 「水木さんは、叱られているのですか……」  私もつぶやいた。小さな命を愛しんだ水木さん。その気持ちは尊く大切にしてほしいけど、危険な行為だったことも事実だと思う。さらには他の先生も巻き込んで危険な目にあわせてしまった。  このことは、反省してもらわないとまた同じ事がおこるかもしれない。私は、ただ手放しで彼女の優しさを褒めることができないことに教員の厳しさを感じた。 「赤葉先生! そんな悲しそうな顔をするなよ。叱るのはわしらの役目。でもな、ちゃんと彼女を愛して褒めてくれる人もいるから。見て見な」  織田先生の指さす方を見ると、そこには、水木さんとお母さんお父さんが涙を流して抱き合っていた。その傍らで、担任の先生が微笑んでいる。その手には、あの子犬がしっかりと抱きしめられていた。  いつしか他の先生もお互いにねぎらい合ってほほ笑んでいた。  私、今日も初めての体験をしたな……。  終
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!