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ソレを俺の子とは認められなかった。
だって、そうだろ?
まひるは愛人で、俺には本妻の夕子がいる。
婚約中に子を孕みはしたが、都合が悪いから堕ろさせたところ、それからは俺の親がどんなに望んでも孕まなかった不出来な女房が。
あいつがなかなか孕まないから、子どもなんてそうそうにできるモンじゃあないんだ。
だから、愛人も俺の子をひょいと孕むわけがない。
愛人が生んだ、何処ぞの馬の子を認知する馬鹿が何処にいる?
俺は寛大で優しいから、まひるにせびられたら金くらいやるが、認知なんぞしてたまるか。
アレが俺の子と認めた日には、夕子がなんと言うか。
夕子はきっと、出て行くだろう。
それは困る。
あいつは会社の連中とウチの親をあやす為に家にいさせなきゃならなくて、ゆくゆくは年取った親を看る役割があるんだ。
そんな面倒なこと、可愛いだけが取り柄で甘ったれた馬鹿女がやるわけない。夕子が逃げたら、まひるも逃げるのは決まってる。
それは困るだろ。
――だから、アレを認知するわけにはいかねーだろうがよ。
「クソが!」
愛人の部屋で見つけたのは疫病神。
これを片さなければ、いずれ見つかる。
この部屋は俺が買ったもので、しょっちゅう出入りしているから、疑われるのはまず俺だ。
片さなければ。隠さなければ。
むせかえるような暑い部屋。吐き気のやまない腐敗臭。減ることを知らぬ蠅に顔を顰め、俺はソレのいる部屋に足を踏み入れた。
この時の俺は予想もしなかったのだ。
すべてを終えた数日後、自宅に帰って見たものを。
いつになく上機嫌な女房に大事そうに抱かれ、玄関で呆ける俺をキョトンと見上げる、かわいらしい顔のソレ。
「うそ……だろ?」
ソレは、間違いなく、俺が山に埋めた筈の……
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