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首を持ちあげてようやく俺は寝ていたんだと気づいた。
目の前にあるのは一人分の鴨南蛮そば、そしてコップに注がれたミネラルウオーター。
「そうだよな、アニキは三年前に死んだんだもんな」
窓に視線を向ける。するとカーテンの細い隙間からでも月のかがやきが見えていた。
三年前の今日は雨だった。
アニキは仕事の急な呼び出しに、スクーターで行くと言ってきかなかった。
「雨なんだし、歩きで行けよ。遠いわけじゃないんだし」
「急いで行って急いで帰りたいんだよ。マモルのためにさ」
そう言うアニキを俺は止められなかった。
もし止められていたら、今が変わっていたかもしれない。
雨で見通しが悪くなったという言い訳をくり返したトラックの運転手に、アニキは轢き殺された。
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