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それから、ぱったり彼のことを見なくなった。
僕は国家試験の勉強で忙しく、しばらく友達付き合いが悪くなっていたからだ。他の友人たちとも全く遊んでいない。彼のほうもきっと、選挙の準備で忙しくしているだろう。
同窓会へ行ったのは、国家試験までの最後の息抜きと決めていた。
しかし彼の話をきいて、どうせ落選するオチだろうから、いくら受刑者とはいえ、僕くらいは、当日選挙会場には足を運んで、票を入れてやろうとは思っている。
友達の義理があったし、他に支援している候補者などもいない。
新たに候補者全員の公約などをみる余裕もないし、一票の選挙より、僕にとっては、目先の国家試験のほうがよほど大切だった。彼が出ていなかったところで、僕は選挙権を放棄するか、もしくは、適当な候補者にいれていただろう。
選挙に参加することも自分の人生を考えることだとはわかっているから、普段はもう少し選挙にも真面目に取り組み、調べるのだが、正直今は少しの間も惜しい。
この今の一分一秒に、これから先の人生がかかっている。
投票用紙がようやく我が家のポストに投函されたのを、家族で一番にみつけたのは僕だった。リビングでニュースをみていた父に同意を得てから、僕は早速開封し、候補者一覧の紙を開いた。
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