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ところが、一通り目を通しても、彼の名前が見当たらない。
見間違いかと思って、もう一度、最上段から丁寧に読んでいくが、やはり見覚えのある名前はなかった。
「なんだよ、ダマしたのかよ」
口先だけのやる気がないやつだったのか、と僕は彼に幻滅した。そういうやつだとは思っていなかったのだが。
投票用紙を隅の参考書の山に投げるように積み重ね、国家試験の勉強を机の真ん中に広げた僕は、すっかり選挙に行く気をなくしていた。
こんなことなら、日々耐えてきたうるさい選挙カーの音も、勉強の邪魔にしかなっていない。何のために耐えたのだ。
バカバカしくなって、勉強にも今ひとつ、身が入らない。これでは、僕のほうが彼に何でもしてもらわなければ割に合わない。
次に会ったら何をしてもらおうかと、いつしか勉強から気が逸れて、そんなことばかり考えていた。
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