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「あなた、あなた、早く起きなさい」
結婚して24年目、妻が起こしにきてくれた。
競馬場に行くときはいつもお弁当を作ってくれる。
「今日も本命勝負なの」
「外れる馬券は買わないのさ」
「生意気ね」
僕にお弁当を持たせて、負けないでと一言いい玄関まで
見送ってくれた。
今日の競馬のメインレースは、成人式特別記念レース
いつも通り本命馬券を買いズバッと的中させた。
僕は外れる馬券は買わないのさ、そう呟き勝負師の真似をした笑い顔を作って見せた。
メインレースも取ったのですかと
さっき競馬場で知り合った男から祝福された。
お腹が空いたので、妻が作ってくれたお弁当を出し
食べていると、馬券は当てるし手作り弁当ですかと
男が羨んだ。
帰り道、勝ち組道路を歩いていると、格好の良い
羽織袴の出で立ちで、ニッコリ微笑みこんにちはと
親しげに挨拶をしてくれた若い女性
こんな美人の知り合いは、僕にはいないはず
「貴女は何処の美人様ですか」
うっかり昔よく使っていた言葉を、口に出してしまった
「それじゃぁ、またね」
美人様はそう言って、格好の良い羽織袴姿で
どこかに消えるように歩いて行った。
誰だったんだろう。
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