猫又の憂鬱

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猫又の憂鬱

 妾の名は如月桔梗。猫又である。かれこれ二百年は人に化け生活しているベテラン猫又である。妾にかかれば人を意のままに動かす事など容易で思い通りに生きてきた。――そう。生きてきていたのだが、最近そんな妾を憂鬱にさせる存在が現れ困惑させられている。  その者の名は柳守粋。なかなかのイケメンで妾好みの男なのだが、妖術が効かないのだ。妾のものにしようとあの手この手と妖術を使うもいっこうに靡く気配は無く妾は自信を失いかけて憂鬱な気分になっていた。    我が名は柳守粋。猫又である。これでも人に化け四百数十年は生き、関ヶ原の戦をこの目で見てきた生き字引なのだがそんな事を言って誰が信じるだろうか。そんな我なのだが最近困った事に巻き込まれているのだ。それはまだひよっこの雌の猫又が我を人間と思い幻術をかけてくるのだが、それがなかなかにウザい。我が正体を明かしても良いのだがそれはそれで癪に触るので今に至るわけだ。至極憂鬱である。明日も幻術をかけられるかと思うとうんざりとした気分になるが我慢せねば成るまい。猫又とはかくも不便なものよな。化けてるのをバレるのはプライドが許せぬのだから。 二人の駆け引き、いや、二匹の駆け引きは今後も続くのだろう。猫又の矜持と共に……。
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