冷たい夫と新婚生活

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「さあ、まずは換気から始めるわよ」 動きやすい格好に着替え、準備が整ったリリスは、ルーナとユーリを連れて早速城内の掃除に取り掛かることにした。手始めにカーテンと窓を開け、部屋の換気からスタート。薄暗かった室内に光が差し込み、それだけで辺りがパッと明るくなった。 「本当に、リリス様もやるんですか?」 隣には申し訳なさそうな表情を浮かべたルーナが、雑巾やら棒やら掃除道具を運びこんでいる。 「ええ、もちろん。ダリウス様からは好きにしていいと言われているわ」 リリスは窓を開けながら、そう言った。正確には「勝手にしろ」だったが。 「申し訳ありません、リリス様。僕が、きちんと掃除をしていなかったばっかりに……」 ルーナの隣では、眉を下げて同じく申し訳なさそうな顔をしているユーリが雑巾を絞っていた。けれど、二人の前に立つご主人様は、まったくそんなことは気にしていない様子。 「いいのよ、気にしないで。これから住むことになる場所だし、綺麗にしておいて損はないでしょう」 「それは、そうかもしれませんが……」 「さっきも言ったけど、住環境の衛生面が悪ければ、病気を招く恐れもあるわ。私たちの身を守るためにも、ダリウス様の身を守るためにも、この掃除が重大任務だってことがわかるでしょう?」 そこまで言われては、2人も首を縦に振らざるを得ない。 「……リリス様って、ときどき頑固なところがありますよね」 側に仕え、主人の性格をよく知るルーナは、諦めたかのようにため息をついた。一方のユーリはオロオロと戸惑っている。 「何か言ったかしら?ルーナ」 「いいえ、なんでもありません……!」 リリスの美しい微笑みに、これ以上は何も言えなくなってしまったルーナ。かくして、新居となる城の掃除大作戦が決行されることとなったのだ。
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