冷たい夫と新婚生活

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◇◇◇ 「奥方様は、今日は一日中使用人たちと城内の掃除をされていたようですよ?」 夜も更け、辺りがすっかり暗くなってきた頃、ダリウスの私室にやってきたクロードが、部下のノエから仕入れた話を部屋の主に聞かせていた。 「は?どういうことだ、それは」 気怠げにソファに横たわっていたダリウスは、副官の話に眉間のシワを深くさせた。クロードは、そんなダリウスの顔をソファの背の裏から覗きこみ、にこりと笑う。 「ほら、客間とかパーティーができる大広間とか、使わないからってあまり掃除しろって俺たちも言わなかったでしょう?あそこを今日はみんなで掃除したらしいです」 楽しそうに話すクロードに、ダリウスはフンと鼻を鳴らすと「結構なこった」と呟いた。 「あ、興味なさそうですね」 クロードが詰め寄ると、ダリウスは「実際どうでもいい」と投げやりに返した。 「勝手にしろと言ったのは俺だしな」 「確かに言ってましたね。初日に俺がせかしてようやく顔を見せにいったと思ったら、あんな態度で冷や冷やしましたよ」 「……反応を見るためだとかなんとかで、変な小芝居しやがって」 そのときのことを思い出したのか、クロードは「ああ、あれね」と相づちを打った。 「まあ、それにしても……『勝手にしろ』と言われて、それが『城内の掃除』って方向にいったことに俺は驚きましたけど」 クスクス笑うクロードからダリウスは視線を逸らし、窓の外を見つめた。 「しかも、あの一癖も二癖もあるアベルと床拭き対決までして、華麗に勝利を収めたって話ですよ?なかなかおもしろい王女様じゃないですか」 「俺も見てみたかったな、その対決」と続けたクロードに、ダリウスは黙ったまま。それを不思議に思ったクロードが、ダリウスに目を向けると 「……お前は、忘れたのか」 と、問われた。その声は地を這うような低さで、静かな怒りが込められていた。 「王家の人間が、俺たちにした仕打ちを」 その言葉にハッとしたクロード。 「……軽はずみな発言でした。申し訳ありません」 ダリウスは窓の外へと視線を戻すと、「いや……。あれから、もうすぐ半年か」と、小さくため息をついた。 思い出すのは、大魔獣を退治してから数ヶ月後のある日。魔獣退治の後処理で、王城を訪ねたときのことだった。
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