王都でのパーティ

3/22

855人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「ご存じかと思いますが、私とダリウス様は愛で結ばれた結婚ではありません。建前上の理由は別にあるものの、王家とダリウス様、双方に利があるため合意となった政略結婚であることは……周知の事実です。そういうこともあって、最初は私たちの間にも距離がありましたが、マチルダとのことをきっかけに、少しずつ、その距離が縮まってきていました。でも……」 そこで表情が暗くなったリリスを見て、マチルダはそっと先を促した。 「でも……?」 「差し出した手を、取ってもらえませんでした……。苦しんでいるあの人を助けてあげられたらと思っていますが、その必要はないと一刀両断されました。私のやっていることは『偽善』なのだと。そうやって拒絶されている彼と、今後どう接していけばいいのか、わからなくて悩んでいます……」 話をじっと聞いていたマチルダは、「リリス様」と慈愛に満ちた眼差しでリリスを見つめた。 「リリス様は……どうしたいですか」 「私が、どうしたいか、ですか……?」 「ええ、ダリウス様のことは一旦おいておいて。自分の心はなんといっていますか」 尋ねられて、しばらく考えこむリリス。拒絶されたことばかり気にしていて、自分がどうしたいかなんて今まで考えたこともなかった。 (私が、どうしたいか……) と、じっくり考えて出てきた答えは──。 「私は……拒絶されても、また手を差し伸べ続けたいです」 リリスは自分の手のひらを見つめながら、そう言った。 触れようたした手は振り解かれた。「助けなどいらない」と告げられ、「偽善者だ」と言われたけれど、苦しそうにうなされていたダリウスの姿を思うと、自然と手に力がこもる。 答えを出したリリスに、マチルダは笑いかけた。 「だったら、リリス様はリリス様のしたいようにすればいいだけです。ほかの誰かに言われたからではなく、あなた自身がそうしたいからと思うことを、すればいいんですよ。……その思いは、たとえ時間がかかったとしても、きっといつかダリウス様にも届くと思います」 マチルダはにこりと笑って、そう言った。胸の内を吐露することで、幾分心が晴れたのか、リリスの表情も明るくなった。 「そうですね……。私のやりたいことをやる。それでダメだったら、そのときはそのとき、くらいの気持ちでいた方がいいのかもしれませんね」 「そうですよ!」 「よし!」と、気合いを入れて両手をグッと握りしめるリリスに、マチルダもエールを送ったところで、「あ、そうだ!」と声をあげた。 「ダリウス様の好きな料理を作って差し上げるのはどうですか?」 「料理、ですか?」 首を傾げるリリスに、マチルダはふふんと自慢げに笑った。 「相手の心を掴むには、『胃袋から』と言うでしょう?」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

855人が本棚に入れています
本棚に追加