王都でのパーティ

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◇◇◇ 月が煌々と輝き、空はすっかり闇に包まれ人々が寝静まった頃、ベッド以外のものがほとんどない部屋で、ダリウスは一人眠っていた。 「うう……っ」 だが、その顔は苦しそうに歪み、息も荒かった。胸を抑えながら丸くなった体。しばらくすると、ハッと目を開けたダリウスが勢いよく飛び起きる。 「はぁ……はぁ……」 乱れる息。ダリウスは自分の両手をじっと見つめ、ほっと一息ついたかと思うと、立てた片膝に額を預け、ぐったりとうなだれた。 『でも、それだとずっとダリウス様が苦しいままじゃないですか!』 あの夜、リリスに言われたことを思い出す。優しく、心配そうに声をかけてくれた彼女の手を、ダリウスは自らの手ではね除けた。助けなどいらないと言ったのは本心だった。 この苦しみは、多くの仲間を死なせて生きている自分への罰なのだと受け入れている。 国を救った英雄と讃えられているが、自分が生き残ってしまったことへの後ろめたさはどうしたって消えてくれない。仲間たちがたびたび夢に現れるのは、その罰への戒めのような気がしてならなかった。 『知ってるか?……そういうのを“偽善者”と言うんだ』 そう言ったときの彼女の顔が頭によぎる。傷つけたと思った。けれど、それと同時に「これでいい」とも思ったのだ。陽だまりのように笑う彼女は、清廉で自分とかけ離れた存在なのだから。それなのに──。 『なにか、私にできることはありますか』 胸のうちに生まれた小さな点。その点が広がっていくことに、ひどく怯えている自分が情けなかった。 「クソ……ッ」 小さく呟いた声は思いのほか弱々しく、静かな部屋にすぐに消えてしまった。
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