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◇◇◇
1日かけて王都へ辿り着いたリリスは、翌日の夜、招待されていた妹の誕生日パーティに出席していた。
贅を尽くし華やかに彩られた王城には、隣国の王子から有力貴族などが大勢訪れ、とても賑やか。煌びやかに装飾された会場、テーブルの上には食べきれないほどの料理が並び、国王や王妃、そして本日の主役であるエリーゼの周りには、ひっきりなしに挨拶をしに人がやってきている。
エリーゼは淡いピンクに、細かな刺繍が施されたドレスを身に纏っていた。ふわりと笑う姿は、まるで妖精のようだと称賛している者もおり、本人は終始ご機嫌である。
(みんな楽しそうね……)
リリスは、そんな様子を会場の隅に立ってぼんやりと眺めていた。最初はリリスも挨拶にやってくる人々の相手に忙しかったのだが、気疲れしてしまい、いまは目立たないようシャンパングラスを片手に端っこにいる。
『あら、リリス様。今日は夫のダリウス様はご一緒ではないの?』
一人でいるリリスに、そう何度問いかけられたか分からない。それだけなら、まだいい方で中には『やはりあのダリウス・クロフォードが相手となると、結婚生活も大変なんでしょうな』だなんて不躾な発言をする人だっていた。
パーティにパートナー同伴で出席しない人もいるとはいえ、やはり今回の主役、エリーゼの姉であるリリスがそのように注目を集めてしまうのも無理なかった。
(やっぱり同伴してもらうようお願いした方がよかったかしら……)
そうも考えてみたが、いまの二人の関係ではやはり一緒に出席するのは難しかっただろうとも思う。会場の隅で手持ちぶさたになっている人は、リリス以外にもチラホラいるため問題はないだろうが。
「はあ……」
自然と漏れてしまうため息が、余計にリリスをどんよりとした気分にさせた。と、そのとき。
「あら、お姉様。そんな大きなため息をついてどうされましたの?」
リリスの前に、大勢のお連れを連れたエリーゼがやってきた。
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