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◇◇◇
「こちらです」
翌日の夜、人目を忍んでリリスがダリウスを連れてきたのは、城から少し離れたところの高台にある教会だった。白い外観はやや古びた印象を受けるが、レンガ造りの立派な建物だ。
「どうして俺をここへ?」
「……それは中へ入ったら分かります」
リリスはそう言って微笑むだけで、理由は語らなかった。教会の入り口には鍵穴がある。リリスは首元からネックレスを取り出すと、それを外す。ネックレスのトップには装飾が施された金色の鍵がついていた。手慣れた様子で鍵を開けるリリスは、ガチャリと鍵を開けると、「どうぞ」とダリウスに目で合図した。
ダリウスがそれを受けて、ゆっくりと扉を押せばギィという音を立てて扉が開く。
「ここは……」
扉の向こうに見えたのは何十、何百もの灯が灯ったキャンドル。教会内は厳かな雰囲気が漂っており、幻想的な景色が広がっていた。
「……王政府が大昔に所有していた教会だとか。現国王や王妃も知らない、秘密の場所です」
リリスはそう言うと中へと入り、一人ヴァージンロードを歩いていく。ダリウスも辺りを見渡しながら、ゆっくりとそのあとをついていった。静かな教会内には二人だけ。
「……どうして俺をこんなところに」
ダリウスからの質問に、リリスはくるりと振り返った。ドレスの裾がひらりと舞い、十字架と、壮麗なステンドグラスを背景に立つリリス。やさしく微笑むその姿に、ダリウスの胸がどくりと音を立てた。
「……ダリウス様をご案内したいのは、この先の隠し部屋です。どうぞ、こちらへ」
差し出されたリリスの手を、ダリウスはしっかりと握りしめた。そして、向かった先に広がっていたのは──。
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