王都でのパーティ

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「ここは……」 目の前には、天井高くにまで並べられた数多くの位牌。その石に書かれた文字を見ると、どれにも「特務騎士団所属」と記されている。それらのほとんどは、見覚えのある名前にばかりだった。 「……英霊たちを祀る大きな墓石は立てられましたが、個人を祀る墓地はまだ整備が行き届いていないのが現状です。本当はもっときちんとした場所にと思っていますが……王家の人間に見つかるといけないので、いまはこの隠し部屋に祀っています。以前は私が、私が王都を離れてからは信頼のおける従者に管理を任せています」 ダリウスは改めてぐるりと辺りを見渡したあと、壊れ物を扱うかのようにそっと、一番近くにあった位牌を手に取った。 「第95代特務騎士団団長、ジル・クラーク……」 それはダリウスに『もし俺が死んだときは……お前が次の団長になってくれ』と、そう言い残して死んでいった友の名前。一つ一つの名を見れば、かつて共に過ごした仲間たちとの思い出が蘇る。 『ダリウス、お前そんな端っこに座ってないで、こっちへ来い』 『うるせぇ、俺は静かに飲みたい派だ』 『まあまあ、ダリウスさん。そんなこと言わずに、俺が酒注いであげますから皆で飲みましょうよ』 『あ、ニコルが作ったクリームシチューあるぜ!あのマチルダ直伝レシピのやつ』 『酒とクリームシチューなんざ合わねぇだろ』 『いやいや、それが合うんですって!試しに食べてみてくださいよ。ほらほら』 そうやって戦地へ向かう前夜、バカ騒ぎしていたことを思い出す。 血を吐くような訓練も、絶望に苛まれた戦地でも仲間たちがいたから前に進んでいけた。彼らの死を無駄にせず、未来へ繋いでいくのだと心に誓って最後まで必死にあがくことができたのは、紛れもなく、彼らの存在あってこそ。けれど──。 黙ったまま位牌を見渡していたダリウスの動きが止まる。リリスが近づき手を伸ばそうとすると、振り返ったダリウスは顔を伏せたまま、部屋を出ていった。
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