第一話 尾張の大うつけ

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◆◆◆  片や――、美濃国(みののくに)。  稲葉山城(いなばやまじよう)の一室で、その男は一通の書状を開いた。 「尾張の虎め……」  男の名は斎藤新九郎利政(さいとうしんくろうとしまさ)――、またの名を道三。  今や美濃国の大名だが、道三は元々は油売りであった。  当時名乗っていた名は庄五郎といい、武士になりたいと思った庄五郎は、美濃守護・土岐氏守護代(ときししゆごだい)長井長弘(ながいながひろ)・家臣となることに成功し、長井氏家臣・西村氏の家名をついで西村勘九郎正利を称した。 斎藤姓を名乗るようになったのは天文七年、美濃守護代の斎藤利良(さいとうとしなが)が病死したのがきっかけである。  道三が呟いた尾張の虎とは、織田信秀のことである。  道三が美濃の国主となる際、美濃守護大名・土岐頼芸(ときよりのり)と対立関係にあった。きっかけは道三が頼芸の弟・頼満を毒殺したためだが、その頼芸を道三は尾張へ追放した。これにより、道三は美濃の主となったわけだが、頼芸を後押ししたのが尾張の虎と言われた織田信秀である。
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