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第十二話 さらば! 尾張の虎、織田信秀死す!
「これで――、わからなくなりましたなぁ」
尾張・末森城――、織田家家臣・佐久間盛次が最初に口火を切った。
「不謹慎だぞ! 盛次」
家老・佐久間盛重に諌められても、その口は止まらない。
「各方も肚は同じでござろう。家督相続の件は織田弾正忠家だけの問題ではござらん。我ら家臣は戦場に於いて主君に命をかけておる。駿河の今川、甲斐の武田、今川に組する三河までが尾張に侵攻を開始でもすれば、総大将がうつけでは……」
そこまで言われて「確かに」と同調し始める者が出てきた。
「ここは、今川と手を結んでは如何か?」
「しかしそうなれば、今川は見返りを要求してこよう」
「信行さまが家督を継がれるまでの間じゃ。殿が亡くなられた今、今川はこれ幸いと攻めて参ろう。これを迎え撃つだけの戦力が、我々にござるか?」
主君・織田信秀を失い、家臣が二つに割れているような状態では、今川・松平軍を相手に戦えるだろうか。
確かに今川の侵攻を食い止めるには、和睦もやむを得なしだろう。
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