第十二話 さらば! 尾張の虎、織田信秀死す!

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「――柴田どの、信行さまはなんと?」  問いかけられて、柴田勝家は眉を寄せた。 「……ご自身の口からは言えまい。家督を継ぐ、などとは。まだ信長さまを慕われておられる」  それはこの、二刻前(ふたときまえ)のことだ。  勝家は、信秀の正室・土田御前に呼ばれた。  おそらく、今後のことだろう。  部屋を訪ねると、信行が座っていた。   「――また、そのお話ですか?」  信行は母・土田御前を前に嘆息(たんそく)した。 「信行、そなたはこの末森城の主。いえ、織田弾正忠家の主なのです」 「母上、那古野城の兄上こそ正当な跡継ぎです」 「信長では、家臣たちはまとめられません。アレがこれまでなにをしてきたか、そなたもわかっておりましょう。信行」  相変わらず、信長には厳しい土田御前である。  信長とて彼女にとっては実の子、ただ産んですぐに乳母に託され、母子として過ごしたのはほんの僅か、愛情が自分で育てた信行よりも薄いのは仕方ないだろう。  さらに信長の素行の悪さが、彼女が信長に厳しい要因である。 「私は、兄上を差し置いて織田弾正忠家を継ぐつもりはございません!」
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