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信秀は、朝廷との縁にも積極的だったらしい。
上洛して朝廷にも献金し、天文十年の嵐による内裏の建物倒壊に際しては、の修理料として四千貫文を献上したという。
三河に勢力を伸ばし始めた信秀を、人は尾張の虎と呼んだという。
この日の空は白一色に染められている。
三月となっても風は冷たく、野兎などの獣は寒さにさぞ震えているだろう。
――信長さま……。
恒興は彼の背を追いながら、野を馬で駆けていた。
いつもなら城を抜け出す信長に一言二言文句を言っている恒興だが、この日は黙って従った。何処に向かうのかも聞かず、ただその背を追った。
織田信秀、死す――。
その報せは当然、那古野城内に激震が走らせた。
これからこの尾張はどなるのか――、それは誰にもわからない。
尾張守護・斯波家にもはやその力はなく、その守護代は尾張上四郡の織田伊勢守家と、下四郡の織田大和守家に分かれたままであり、織田弾正忠家では信秀亡きあとの家督相続でまた揉め始めるだろう。
そんなときに今川義元が攻めてくれば、どうなるか――。
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