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織田家家臣の半分は、そう見ているようだ。
それだけ、織田信秀の存在は大きく、失った衝撃も大きかった。
「まさに、蛇に睨まれた蛙だな」
信長は及び腰となっている彼らをそう嘲笑った。
「信長さまは、今戦って勝てると思いますか?」
池田恒興は信長の隣に並び立ちながら、そう聞き返す。
「さぁな」
「ですが、これは明らかに喧嘩を売っていませんか?」
二人の前では、着々とあるものが築かれようとしていた。
尾張・鳴海――、山王山。
鎌倉街道を眺めるだけならいい場所だが、信長は砦を築き始めた。そう、彼は今川と戦うことを諦めてはいないのである。
さらに、この頃より名を『三郎信長』改め『上総介信長』としている。
今川義元も名乗っているという『上総介』を名乗ることは、今川への対抗意識もあるのかも知れない。
しかしこうした信長の徹底抗戦の考えは、生き延びる道を探っていた一部織田家家臣のさらなる不信を煽る形となったらしい。
さらに、である。
「鳴海城主・山口どのが、今川へ寝返りましてございます」
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