第十三話 宣戦布告!

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 那古野城に戻った信長に、そんな報せが届く。 「殿……」  上段の間にて、信長の隣にいた正室・帰蝶が不安そうに信長を見た。  鳴海城主・山口――、正式名を山口教継(やまぐちのりつぐ)という。  織田信秀に従い、小豆坂の戦いでは今川義元配下の軍勢と戦って戦功を挙げたという。 信秀に重用され、三河との国境の要地である鳴海城を任され尾張南東部の備えとなっていたその山口教継が、こともあろうに裏切ったというのである。 「やはり今川は、諦めていないようだな」  不敵に笑む信長に、恒興は眉を寄せた。 「――と言いますと?」 「この尾張が欲しいに決まっているだろ。和睦なんぞしてみろ。奴はこれ幸いと出張ってくる。なにしろ戦わずして尾張を手に入られるんだからな」 「つまり停戦は、今川に機会を与えたと?」 「こちらが充分に動揺するよう打撃を与えてな。案の定、その通りになった。そうだよなぁ? 信盛」  話を振られた上に睨まれた佐久間信盛は、その顔を強張らせた。  二年前の今川による尾張大侵攻は、確かに尾張に打撃を与えた。そこに朝廷からの停戦命令である。
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