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「守護代・大和守さまにおかれましてはご挨拶が遅れ大変申し訳なくおもっておりまする」
「気にされるな。信秀どのが突然逝去されたのだ。まことに良き武将であった」
「そう言ってくださり、亡き父・信秀も喜ばれましょう」
「弾正忠家は我が守護代の臣下、なれど分家でもある。いわば親戚じゃ。諍いはあったが、これからは尾張のため、手を携えて行きたいと思っての」
そう言って目を細める信友に、信行は頭を下げた。
果たして守護代はなにゆえ自分を呼んだのか――、その真意が掴めずにいた信行だが、もし反抗する意思があると思われているなら誤解を解かねばならない。
「それは重々承知しております」
「さすがは、信行どのじゃ。弾正忠家の当主たる器ぞ。のう? 大膳」
「はっ。信行さまならばお務めをしかと励まれましょう」
「務め……?」
「弾正忠家は元々尾張三奉行じゃ。守護代を支えるのが務め。まさかよもや、尾張を手に入れようなど思ってはおるまい? 信行どの」
「そのようなことは……」
尾張三奉行とは尾張下四郡守護代・大和守家に仕える奉行三家のことで、因幡守家・藤左衛門家・弾正忠家の三家である。
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