第十四話 暗躍する織田大和守、決裂した主従関係

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第十四話 暗躍する織田大和守、決裂した主従関係

 長雨(ながあめ)(※梅雨)が去り、尾張に白南風(しらはえ)(※梅雨明けに吹く南風)が吹く。  これからの時期は厳しい日照りに(さら)されることになるが、武将たちが気になるのは敵の存在とその動向だろう。  ただ――。 「末森城の信行さまだが……」  那古野城内・馬屋――、やってきた織田家家臣・佐久間信盛(さくましのぶもり)が眉間に(しわ)を寄せていた。 「信行さまが如何(いかが)されましたか? 佐久間さま」  前田犬千代たち小姓たちと馬屋にいた恒興は、胡乱(うろん)に眉を寄せた。 「弾正忠信勝(だんじようちゆうのぶかつ)と名を改められたそうだ」  武家で名が変わることは珍しくはなく、犬千代が首を傾げた。 「それが変なことなんですかぁ? 佐久間さま」 「弾正忠は官位なのだ」  そもそも弾正忠とは律令時代の弾正台(だんじようだい)に発し、四つある位の一つだという。  織田弾正忠家は当主が朝廷より弾正忠の官位を与えられたゆえで、家督(かとく)を継いだからと、弾正忠ではないらしい。つまり信行の『弾正忠』は自称である。
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