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ゆえに信長は弾正忠家の家督を継いでも、弾正忠とは名乗らずに上総介を自称している。
二人の父・織田信秀は、朝廷に献金して支え、弾正忠と名乗ることを許されたという。
ならば信行は、なぜ弾正忠を自称するのか。それは弾正忠を名乗ることで、自分が家督を継いだことを意味すると思ったのだろうか。
「信長さまが、家督を継がれたんじゃないんですか!? 池田さまっ」
犬千代がものすごい勢いで恒興に迫ってきたが、自分に言われてもである。
「私に噛みつくな! 犬千代」
「これまで信行さまは、常に信長さまをたててこられた。聞くところによると、清須の守護代さまが関わっているらしい」
尾張下四郡守護代が信行の家督相続を推していることは、以前から知られていたことだ。
「再び口を出してきた……ということですか?」
「口を出すだけならばいいが、どうも嫌な予感がしてならぬ」
織田大和守家は信秀の代にも一時対立関係にあり、更にその家臣・坂井大膳は信長を毒殺しようと企んだ。
もし信行の背後に織田大和守家にいるとすると、恒興も胸が騒ぐ。
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