第十四話 暗躍する織田大和守、決裂した主従関係

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 ゆえに信長は弾正忠家の家督を継いでも、弾正忠とは名乗らずに上総介を自称している。  二人の父・織田信秀は、朝廷に献金して支え、弾正忠と名乗ることを許されたという。  ならば信行は、なぜ弾正忠を自称するのか。それは弾正忠を名乗ることで、自分が家督を継いだことを意味すると思ったのだろうか。 「信長さまが、家督を継がれたんじゃないんですか!? 池田さまっ」  犬千代がものすごい勢いで恒興に迫ってきたが、自分に言われてもである。 「私に噛みつくな! 犬千代」 「これまで信行さまは、常に信長さまをたててこられた。聞くところによると、清須(きよす)の守護代さまが関わっているらしい」  尾張下四郡守護代(おわりしもよんぐんしゆごだい)が信行の家督相続を推していることは、以前から知られていたことだ。 「再び口を出してきた……ということですか?」 「口を出すだけならばいいが、どうも嫌な予感がしてならぬ」  織田大和守家は信秀の代にも一時対立関係にあり、更にその家臣・坂井大膳は信長を毒殺しようと企んだ。  もし信行の背後に織田大和守家にいるとすると、恒興も胸が騒ぐ。   
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