第十四話 暗躍する織田大和守、決裂した主従関係

3/8
前へ
/141ページ
次へ
                 ◆  この日――、信長を訪ねて那古野城にやってきた僧侶(そうりよ)がいる。  かつて信長の許育係であった、沢彦宗恩である。 「お元気そうでなによりでございます」  城館の中庭で火縄銃(たねがしま)の射撃をしていた信長は、構えていた銃身を下げた。 「俺が凹んでいると思ったか?」 「いいえ。信長さまは、逆境こそ楽しまれる方。ですがあまりやりすぎますと、御味方も減りましょう」  そう言って苦笑する宗恩に、信長は目を細めた。  さすが父・信秀が信を於いたという僧侶である。信長の、隠された真の姿を見抜いているようだ。 「信行の事を言っているのか……」 「弟君はお優しい方。ですが、周りの影響を受けやすいのも確か」  意味深な物言いに、信長は宗恩を睥睨(へいげい)した。 「何が言いたい?」 「清須の信友さまが、信行さまとよく会われている様子。弾正忠を名乗られたのは、おそらく信友さまの後押し。ですがそれは仮、朝廷からの正式な官位ではございませぬ。問題は、守護代さまが後ろ盾となり、兄君のあなたさまが変わらぬため、御自分が家督を継ぐべきだと決断されたことでしょう」
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加