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立ち上がった信長は、そう声を張り上げた。
「よぉしゃぁ!」
犬千代が嬉々として立ち上がる。
「後れを取るなよ? 犬千代」
「任せてくださいって」
前田犬千代にとって、この戦いが初陣となる。
天文二十一年八月十五日、尾張・松葉城とその並びにある深田城が襲撃された。
襲撃したのは守護代・織田信友大和守ではなく、その家臣・坂井大膳たちらしい。
しかし家臣たちだけで動くはずがなく、この襲撃を信友は知っているだろう。
聞けば松葉城主織田伊賀守と、深田城主織田信次は人質にされているという。
これにより尾張下四郡守護代は、那古野城織田家の敵となることを示した。
――世にいう、萱津の戦いである。
◆
末森城では、一通の書状が信行に届いた。
送り主は守護代・織田信友である。
末森城主となっていた信行は、書状を読み終えて嘆息した。
尾張下四郡守護代が信長に対して敵対の意思を示し、戦をしかけたとのことである。
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