第十四話 暗躍する織田大和守、決裂した主従関係

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 立ち上がった信長は、そう声を張り上げた。 「よぉしゃぁ!」  犬千代が嬉々(きき)として立ち上がる。 「後れを取るなよ? 犬千代」 「任せてくださいって」  前田犬千代にとって、この戦いが初陣となる。      天文二十一年八月十五日、尾張・松葉城とその並びにある深田城が襲撃された。 襲撃したのは守護代・織田信友大和守ではなく、その家臣・坂井大膳たちらしい。  しかし家臣たちだけで動くはずがなく、この襲撃を信友は知っているだろう。  聞けば松葉城主織田伊賀守と、深田城主織田信次は人質にされているという。  これにより尾張下四郡守護代は、那古野城織田家の敵となることを示した。  ――世にいう、萱津(かやづ)の戦いである。                 ◆  末森城では、一通の書状が信行に届いた。  送り主は守護代・織田信友である。  末森城主となっていた信行は、書状を読み終えて嘆息(たんそく)した。  尾張下四郡守護代が信長に対して敵対の意思を示し、戦をしかけたとのことである。
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