第十五話 尾張に吹く旋風! 険しき夢の道

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 大地を駆ける風が信長の後ろ髪と、真紅の外套を(なび)かせる。  ――この戦い、負けるわけにはいかない。   そんな彼の視界に捉えられる、織田木瓜紋。  元は一つだった織田一族――。  応仁の乱で分裂し、尾張に二人の守護代が誕生するに至った。  それはいい。  問題は同じ織田一族で対立し、ついに戦まで始めたことだ。  今川義元はさぞ、揺れる尾張を嘲笑(わら)っていることだろう。こんな状態では、今川を打破することはできない。  そんな信長の所有物の中に、堺で知り合った南蛮人(なんばんじん)から譲られた地球儀がある。  それがあるのは那古野城の最も奥――、信長がまだ吉法師と名乗っていた頃から存在し、納戸となっていた一角である。  今や贈答品や買い集めた南蛮の品など、信長の趣味の部屋と化しているが、そこにいる間は城主だということも忘れ、遥かな見知らぬ異国への想いを(はせ)せられた。  初めてその地球儀というものを見せられたときも驚いたが、そこにはあらゆる国の地図があるという。 「――――なら、尾張は何処だ?」 「尾張……ですか?」
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