14人が本棚に入れています
本棚に追加
大地を駆ける風が信長の後ろ髪と、真紅の外套を靡かせる。
――この戦い、負けるわけにはいかない。
そんな彼の視界に捉えられる、織田木瓜紋。
元は一つだった織田一族――。
応仁の乱で分裂し、尾張に二人の守護代が誕生するに至った。
それはいい。
問題は同じ織田一族で対立し、ついに戦まで始めたことだ。
今川義元はさぞ、揺れる尾張を嘲笑っていることだろう。こんな状態では、今川を打破することはできない。
そんな信長の所有物の中に、堺で知り合った南蛮人から譲られた地球儀がある。
それがあるのは那古野城の最も奥――、信長がまだ吉法師と名乗っていた頃から存在し、納戸となっていた一角である。
今や贈答品や買い集めた南蛮の品など、信長の趣味の部屋と化しているが、そこにいる間は城主だということも忘れ、遥かな見知らぬ異国への想いを馳せられた。
初めてその地球儀というものを見せられたときも驚いたが、そこにはあらゆる国の地図があるという。
「――――なら、尾張は何処だ?」
「尾張……ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!