第十五話 尾張に吹く旋風! 険しき夢の道

6/8
前へ
/141ページ
次へ
「やられっぱなしでいいんですか!?」  利家が二人に吠えたが、攻め込めない理由は恒興にもわかる。 「殿、守護代さまは今川と通じているという報がございます」 「それは誠か……!? 恒興」  那古野城家臣団の一人、菅屋長頼(すがやながより)が腰を浮かした。 「夏まで清須にいた本田さまの言葉です」  萱津戦(かいづせん)の折、清須城から此方側(こちらがわ)へ寝返った者がいる。それが本田という元・大和守家臣という男である。 「我々を誘き出すための策謀(さくぼう)ではないのか……?」 「殿!」  家臣団の視線が、一斉に上段の間に注がれる。 「それが偽りにしろ真実にしろ、こちらから清須に攻めるのは得策ではない。かえって、主家に弓を引いた謀反人として、清須にこちらを攻める大義名分を与える」  信長も、此方側から仕掛けるのは危険とわかっていた。 「しかし今川と通じているのが事実ならば、許せませんな」 「主を義統(※尾張守護・斯波義統(しばよしむね))さまから、今川義元に乗り換えたか」  信長は鼻を鳴らし、そう嘲笑った。  
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加