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「やられっぱなしでいいんですか!?」
利家が二人に吠えたが、攻め込めない理由は恒興にもわかる。
「殿、守護代さまは今川と通じているという報がございます」
「それは誠か……!? 恒興」
那古野城家臣団の一人、菅屋長頼が腰を浮かした。
「夏まで清須にいた本田さまの言葉です」
萱津戦の折、清須城から此方側へ寝返った者がいる。それが本田という元・大和守家臣という男である。
「我々を誘き出すための策謀ではないのか……?」
「殿!」
家臣団の視線が、一斉に上段の間に注がれる。
「それが偽りにしろ真実にしろ、こちらから清須に攻めるのは得策ではない。かえって、主家に弓を引いた謀反人として、清須にこちらを攻める大義名分を与える」
信長も、此方側から仕掛けるのは危険とわかっていた。
「しかし今川と通じているのが事実ならば、許せませんな」
「主を義統(※尾張守護・斯波義統)さまから、今川義元に乗り換えたか」
信長は鼻を鳴らし、そう嘲笑った。
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