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評議を終えたのち、信長はかつて銃の取り扱いなどを教授されたという師、橋本一巴の来訪を受けた。
「ご無沙汰しております。織田上総介さま」
「尾張にいないと思えば、旅に出ていたとな」
「諸国を巡るのは楽しゅうございます。私は武将ではないゆえ、警戒されることはございませんでした」
「お前ほどの知恵の者なら、甲斐の武田や相模の北条、越後の上杉、それに――、駿河の今川に召し抱えられてもおかしくないだろうに」
「他の方々は、戦場での火縄銃使用は得策ではないという考えかと。高価な上に、次に撃つまで間が空きますゆえ」
「それを買っている俺は、やはり相当なうつけだな」
そう言って自虐的に嗤う信長に、一巴は口許を綻ばせた。
「いいえ。信長は先見の明をお持ちでおられまする。これからの戦は、火縄銃が必要になると。やはり――、信秀公は信長さまを信じておられました」
亡き父・信秀の名を出され、信長は渋面となった。
「俺にはなにも言わずにくたばったぞ? あのクソ親父」
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