第十六話 無念! 伝わなかった想い

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 なのに、計画はまたも失敗した。  斯波義統の手のものに信長暗殺計画が知られ、それをなんと信長に知らせたらしい。  ――こうなれば……。   「誰かいるか?」  信友の求めに、障子がすぅっと開く。 「お呼びにございますか? 殿」 「大膳を呼べ」                   ◆  天文二十二年――一月。 那古野城下は年明けということもあり、活気づいていた。小さな市が開かれ、野菜や魚、反物など所狭(ところせま)しに並べられている。  ごたごた続きの尾張国内だが、この雪である。  国境(くにざかい)を越えて、尾張に侵攻しようなどとは、今川も思っていないらしい。  第一、雪の中の合戦となれば足軽や騎馬の足が雪に取られ、手は(かじか)み、判断も(にぶ)ろう。 この日――恒興は、信長に従って城下に来ていた。    信長はこれまでの(かぶ)いた身なりに衣を戻し、右肩に担いだ乗馬の(むち)がピンと寒天(かんてん)(※寒々とした冬の空)に伸びていた。 そんな信長の斜め後ろにて、恒興はある男のことが気になっていた。     「今年も、積りそうじゃの」 「平手さま」
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