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なのに、計画はまたも失敗した。
斯波義統の手のものに信長暗殺計画が知られ、それをなんと信長に知らせたらしい。
――こうなれば……。
「誰かいるか?」
信友の求めに、障子がすぅっと開く。
「お呼びにございますか? 殿」
「大膳を呼べ」
◆
天文二十二年――一月。
那古野城下は年明けということもあり、活気づいていた。小さな市が開かれ、野菜や魚、反物など所狭しに並べられている。
ごたごた続きの尾張国内だが、この雪である。
国境を越えて、尾張に侵攻しようなどとは、今川も思っていないらしい。
第一、雪の中の合戦となれば足軽や騎馬の足が雪に取られ、手は悴み、判断も鈍ろう。
この日――恒興は、信長に従って城下に来ていた。
信長はこれまでの傾いた身なりに衣を戻し、右肩に担いだ乗馬の鞭がピンと寒天(※寒々とした冬の空)に伸びていた。
そんな信長の斜め後ろにて、恒興はある男のことが気になっていた。
「今年も、積りそうじゃの」
「平手さま」
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