第二話 それぞれの思惑

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 さすがは信長の父、那古野城を譲ったとはいえ、噂は届いているようだ。 「(わろ)うている場合ではありませぬぞ。家中が揺れ動いておりまする」  勝家の諫言(かんげん)に、信秀は表情を引き締めた。 「アレのことは、政秀に任せている」 「ですが万が一のことがあれば、平手どのの腹一つではすみませぬ」 「わしにどうせよと?」  睥睨(へいげい)する信秀に、勝家は視線を逸した。まさか己の口から、弾正忠家・家督相続をどうのとは言えない。 「それは……」 「ところで勝家、信友(のぶとも)さままが信長のことを気にされておられてな。わしに意見してきた」 「意見……にございますか?」  信秀は苦笑したが、その目は笑っていなかった。こちらの(はら)を探っているのか、鋭い眼光は猛将と言われる勝家でさえ恐れさせた。  信友こと織田信友は、尾張守護代・織田大和家当主である。弾正忠家の本家ではあるが、格は主君である大和家が上、従うのが道理である。  なれど弾正忠家の今後について口を挟んできたことが、信秀の疑念(ぎねん)を誘ったようだ。  結局信秀の真意を掴めぬままに、勝家は広間を辞した。
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