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「何年お側にいるとお思いですか? 子供の時から貴方に振り回されているのは、この私ですよ? ま、天邪鬼のあなたを扱えるのは、私くらいでしょうけど」
「言ってくれるじゃないか。勝三郎」
公の場では「殿」「恒興」と呼び合うが、二人のときは昔ながらに戻る。
「ここでは主君、家臣としてではなく、乳兄弟として申し上げております」
「だから?」
「夢を諦めてないでください。この那古野城には、信長さまのために命をかけてもいい思う家臣団がおります。夢を諦めてしまわれたら、あなたは本当の大うつけです!」
これからも、誰かが自分の側から離れていくかも知れない。
だが誰かが、尾張を守らねばならぬ。
――爺、お前には悪いがもう少し、我慢してくれ。
政秀の代わりに天が応えたか、花頭窓の向こうで星が流れた。
そんな信長に、さらなる試練がこのあと待っていた。
正室・帰蝶の父にして美濃の蝮と言われる斎藤道三が、信長に会いたいと言ってきたのである。
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