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織田弾正忠家は守護代ではない。勢力が大和家より大きくなっていることは確かだが、いくら下剋上の世とはいえ、信秀も大和家と事を構えようとは思ってはいないだろう。
ただ、この状況下で今川や武田勢を迎え撃つとなると、冷静に戦えるか些か疑問である。
弾正忠家では家臣までも、信長を推す派と信行を押す派に意見が割れ、実際勝家は信行を推していた。
ふいに、土田御前が口許を緩めた。
「殿は美濃と和睦さなるおつもりのようです」
「先般の敗戦が響いたのでございましょうか?」
「さぁ。ですが、美濃の斎藤道三は蝮といわれているとか。もしかすれば、蝮の毒が功を奏するかも知れません」
妖しく笑う彼女に、勝家は眉を顰めるが真意はわからなかった。
◆◆◆
この日――、空は快晴であった。
そんな空の下を二騎の馬が駆けていた。
「信長さまっ、いったい今日はどちらへ!?」
後ろから追ってくる恒興に、信長は行き場所を告げていなかった。
「いいから黙ってついてこい! 勝三郎」
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