第二話 それぞれの思惑

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 織田弾正忠家は守護代ではない。勢力が大和家より大きくなっていることは確かだが、いくら下剋上の世とはいえ、信秀も大和家と事を構えようとは思ってはいないだろう。  ただ、この状況下で今川や武田勢を迎え撃つとなると、冷静に戦えるか(いささ)か疑問である。  弾正忠家では家臣までも、信長を推す派と信行を押す派に意見が割れ、実際勝家は信行を推していた。  ふいに、土田御前が口許を緩めた。 「殿は美濃と和睦(わぼく)さなるおつもりのようです」 「先般の敗戦が響いたのでございましょうか?」 「さぁ。ですが、美濃の斎藤道三は(まむし)といわれているとか。もしかすれば、蝮の毒が(こう)を奏するかも知れません」  妖しく笑う彼女に、勝家は眉を(ひそ)めるが真意はわからなかった。  ◆◆◆  この日――、空は快晴であった。  そんな空の下を二騎の馬が駆けていた。 「信長さまっ、いったい今日はどちらへ!?」  後ろから追ってくる恒興に、信長は行き場所を告げていなかった。 「いいから黙ってついてこい! 勝三郎」
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