第二話 それぞれの思惑

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 南蛮人は軽衫(かるさん)と呼ばれる筒の部分に膨らみがあり、裾がキュッとすぼまったズボンなるを穿き、伴天連(ばてれん)は(※宣教師)は黒い外套(がいとう)を羽織っている。  那古野城主となった年、信長は南蛮船を見たくて堺まで遠乗りに出かけている。  見るもの聞くもの初めてのものばかりで、新しもの好きな信長としては好奇心がそそられた。城に大人しくいろというのが無理というものだ。  この日の本の遥か海の向こうには、ポルトガルやスペインという国があるという。南蛮人たちはそこからやってきたという。  広い海を自由に駆ける彼らが羨ましく見えた。  彼らの国に比べれば、尾張は小さく映るだろう。  そんな小さな国で一族どうしが睨み合い、誰が織田弾正忠家の家督を継ぐか家臣たちまでもが二つに割れる。  信長は決して継ぎたくないわけではない。  父・信秀のようになりたいと憧れているが、信秀は主君たる器になる教えを示してはくれなかった。自分に呆れている家臣は、逃げているように映るだろう。  そんな信長に、声をかけてきた伴天連がいる。 「これは、信長どの。久ぶりですね? 元気でしたか?」
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