14人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
南蛮人は軽衫と呼ばれる筒の部分に膨らみがあり、裾がキュッとすぼまったズボンなるを穿き、伴天連は(※宣教師)は黒い外套を羽織っている。
那古野城主となった年、信長は南蛮船を見たくて堺まで遠乗りに出かけている。
見るもの聞くもの初めてのものばかりで、新しもの好きな信長としては好奇心がそそられた。城に大人しくいろというのが無理というものだ。
この日の本の遥か海の向こうには、ポルトガルやスペインという国があるという。南蛮人たちはそこからやってきたという。
広い海を自由に駆ける彼らが羨ましく見えた。
彼らの国に比べれば、尾張は小さく映るだろう。
そんな小さな国で一族どうしが睨み合い、誰が織田弾正忠家の家督を継ぐか家臣たちまでもが二つに割れる。
信長は決して継ぎたくないわけではない。
父・信秀のようになりたいと憧れているが、信秀は主君たる器になる教えを示してはくれなかった。自分に呆れている家臣は、逃げているように映るだろう。
そんな信長に、声をかけてきた伴天連がいる。
「これは、信長どの。久ぶりですね? 元気でしたか?」
最初のコメントを投稿しよう!