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「カルロス、例のもの用意はできたのか?」
「はい。最新の絵図面を。他の方に悟られぬようにするには苦労致しました」
「ふ、まさか伴天連のお前がそんなものを持っているとは思うまいよ」
そう言って、信長は笑った。隣では、恒興が不安そうな顔をしていた。
「信長さま、あの南蛮人に何を用意させたのでございますか?」
「今にわかるさ。ただ――、家臣どもがまた眉を寄せることになるが」
信長がそう苦笑交じりに言うと、恒興がゴクンっと生唾を飲み込むのがわかった。
突拍子もないことをやるのは今更だが、信長の真意を理解できる家臣ははたして何人いるだろう。
「お帰りなさいませ」
信長と恒興が那古野城の城門を潜ると、一人の僧侶が彼らを出迎えた。
「――来ていたのか。宗恩」
僧の名前は沢彦宗恩――、臨済宗妙心寺派の僧で、平手政秀が依頼し信長の教育係を務めている。
「はい。末森城に召された帰りにございます」
末森城と聞いて、信長は誰が宗恩を呼んだのかわかった。
宗恩を信長の教育係とするには、政秀だけでは進められない。
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