第二話 それぞれの思惑

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「カルロス、例のもの用意はできたのか?」 「はい。最新の絵図面を。他の方に悟られぬようにするには苦労致しました」 「ふ、まさか伴天連のお前がそんなものを持っているとは思うまいよ」  そう言って、信長は笑った。隣では、恒興が不安そうな顔をしていた。 「信長さま、あの南蛮人に何を用意させたのでございますか?」 「今にわかるさ。ただ――、家臣どもがまた眉を寄せることになるが」  信長がそう苦笑交じりに言うと、恒興がゴクンっと生唾を飲み込むのがわかった。  突拍子もないことをやるのは今更だが、信長の真意を理解できる家臣ははたして何人いるだろう。     「お帰りなさいませ」  信長と恒興が那古野城の城門を潜ると、一人の僧侶が彼らを出迎えた。 「――来ていたのか。宗恩(そうおん)」  僧の名前は沢彦宗恩(たくげんそうおん)――、臨済宗妙心寺派の僧で、平手政秀が依頼し信長の教育係を務めている。 「はい。末森城に召された帰りにございます」  末森城と聞いて、信長は誰が宗恩を呼んだのかわかった。  宗恩を信長の教育係とするには、政秀だけでは進められない。
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