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第三話 種子島が変えるこれからの戦
天文十六年十一月――、那古野城の城門を荷車と共に潜った人物がいる。
名を橋本一巴――、信長にとっては師の一人である。
しかし彼の登城は、一部の家臣たちにとっては眉を顰める存在となっていた。
橋本一巴は砲術家と知られ、信長は彼から銃器の教えを受けていた。問題は、信長が朝早くから試し撃ちをすることだ。これに起こされる家臣は少なくはなく、恒興もその一人であったのだが。
橋本一巴が登城したとき、信長は那古野城の中庭に恒興と一緒にいた。
いつもように緋色と鬱金色の小袖を片肌脱ぎにして、的に向かって弓を射っていた。
ストンっと一直線に飛んだ矢が的に刺さり、恒興はその腕を褒めた。
「お見事でございます」
だが、信長は――。
「世辞を言うな、勝三郎。中心を外した」
小姓の一人から手拭いを受け取った信長は、そう言って軽く舌打ちをした。
そんな二人の前に、来訪者を報せる臣下が片膝を付いた。
「申し上げます! 橋本一巴どのが、殿に御目通りをとお越しになっております」
この報せに、信長の顔が一気に輝く。
「来たか!」
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