第三話 種子島が変えるこれからの戦

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 と、息の弾みにもその歓びを昂らせている。 「ご無沙汰しております。吉法師さま、いえ……、今や那古野城主・三郎信長さま」  他の家臣同様、小袖に肩衣と袴という姿で現れた一巴は、片膝をついて頭を垂れた。 「お前が、国友にいたとは驚いたぞ」 「かの地は、鉄砲鍛冶(てつぽうかじ)がおりまするゆえ」  国友は、近江国(おうみのくに)にある地である。  天文十二年――、大隅国(おおすみのくに)・種子島に南蛮船が漂着したという。この船に乗船していた南蛮人が火縄銃という銃器を持っていたという。  それから一年後――、室町幕府十二代将軍・足利義晴より見本の銃を示され、国友で造られたのが、国内製の始まりとされる。  俗に火縄銃は伝来地の名を冠し、「たねがしま」と呼ばれている。  一巴は一緒に来ていた小物に「あれを」と命じると、小者は荷車に被せてあった茣蓙(ござ)を取り払った。 「できたのか!? 最新の火縄銃(たねがしま)が」  荷台には、二挺の火縄銃が乗っていた。 「まだ試作にございます。南蛮の言葉を読み解くのに少々時間がかかりましてございます。ですが、ここに来るまで冷や汗ものでしたぞ? 信長さま」
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