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しかし火縄銃を戦で取り入れれば、刀や弓よりも遠距離まで攻撃でき、威力もまさっている。撃ち方さえ覚えれば、足軽でも撃てるだろう。
――信長さまは、けっしてうつけなどではない。
うつけと呆れる家臣たちに向けて、恒興はそう言いたかった。
紺碧の空に銃声が轟き、城内に戻ろうとしていた林兄弟が蹌踉めくのが見えた。
さすが最新の火縄銃である。
自分の声を代弁してくれたその威力に、恒興はふっと笑みを零すのだった。
◆◆◆
「――今日も、お元気でいらっしゃる」
那古野城の一室にて、臨済宗の僧侶にして信長の教育係・沢彦宗恩は苦笑した。
ズドンと、火縄銃の銃声が聞こえてきたからだ。この那古野城でそんなことをするのは信長だけゆえ、すぐに彼だとわかった。
「悠長に笑うている場合ではありませんぞ。宗恩どの」
眉を寄せたのは傅役の平手政秀である。
茶を点てつつ、美濃との問題を解決に悩まし気な顔をしている。
美濃との和睦を進めよと末森城の信秀から命じられたという政秀は、美濃にいたと経歴をもつ宗恩を招いたのだ。
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