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――勝三郎、俺はいつか天下を取るぞ!
ふと恒興の脳裏に、過去の記憶が蘇る。
まだ家督を相続する前の信長が、恒興に言い放った言葉だ。
恒興は視線を、信長の背に戻した。
(信長さまなら、成し遂げるでしょう。この池田勝三郎恒興、何処までもお供仕りまする)
彼とともに、恒興も歩み続ける。
ゆえに――。
――熱田の祭神よ、何卒我軍に天の加護を。殿に勝利を。
恒興も祈る。
そんな祈りが天に届いたか、雷鳴が聞こえてきた。
「殿!」
「狙うは今川義元の首一つ!!」
振り向かぬ主の声に、恒興の不安が払拭される。
幼い時よりともに歩み続け、戦場で命をかけて戦う信長と恒興。主従関係であり幼馴染であり、乳兄弟である二人の歩みは天下統一の夢に一直線である。
永禄三年五月十九日――、織田軍は曇天下を進軍を開始した。
――世にいう、桶狭間の戦いの始まりである。
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