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織田弾正忠家の本家であり守護代、織田大和家当主・信友が信秀の当時の居城である古渡城に攻めてきたという。
尾張の虎といわれた信秀も、さすがお手上げだったのか、道三の和睦に踏み切ったようだ。しかし、信長が不快に思ったのはそのことではなかったようだ。
「美濃と戦をしようが和睦しようが父上の勝手だ。それはいい」
「いったい、末森城の大殿はなんと言ってこられたのでございますか?」
「俺に蝮の娘を娶れ――だそうだ」
信長はそういって、眉間に皺を刻む。
「それはなんと申し上げていいのか……」
婚礼も政の一部とされるのが戦国の世、当事者の意見などお構いなしに縁組みが決まる。臣下として主の慶事を喜ぶべきなのだろうが、当の信長が全く喜んでいない。
当然だ。相手は蝮と言われる斎藤道三の娘である。
しかも信長は、まだ十五歳である。
「あの父上を手こずらせた蝮の道三だ。素直に和睦に応じたと思うか?」
「なにか魂胆があると?」
「さぁな」
信長はそう言って腰を上げた。
「どちらへ?」
「万松寺だ。父上が人質とした、三河の息子を見に行く」
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