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竹千代を人質とした織田信秀の第二子は、確か信長という名前ではなかったか。
「和尚、こいつを借りていくぞ」
「大殿のお許しがございましょうや。竹千代どのは大殿が――」
「知っている。別に逃がそうとしているわけじゃない。それに、こいつだってわかっているさ。逃げたら三河がどうなるかを」
信長の肩に担がれた竹千代は、唇を噛み締めた。
外に出たとしても、人質である立場は変わらない。自分が逃げれば三河は今川、織田双方から攻め落とされてしまうだろう。
人質の立場では何をされても文句など言えないのだが、馬の上でも竹千代は担がれたままだった。まさに賊が人を拐うが如く、竹千代は寺から連れ出されたのである。
◆◆◆
一方の尾張・清須城では、尾張下四郡守護代・織田大和家当主、織田信友がほくそ笑んでいた。信友としては織田弾正忠家の勢力がこれ以上大きくなることに懸念があった。
現在は守護代の大和家だが、弾正忠家の力は大きすぎた。このままでは、斯波氏に代わる尾張の大名となる。
そこまで考えて、信友は考えを改めた。
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