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名古屋城広間――、彼を迎えた政秀は坂井大膳の真正面に着座、恒興はその斜め後ろに座った。だが信長に会いに来たであろうに、その信長が現れなくても大膳は気にはしていなかった。その大膳の目が、恒興に向く。
「そちらは?」
「織田弾正忠家家臣・池田恒利が一子、池田勝三郎恒興にございます。若輩者ゆえ、ご無礼の断、お許し願いまする」
恒興は、そう言って頭を垂れた。
「して、守護代・信友さまの家臣である貴殿が、若殿に何用でござろう?」
「昨年の観月(※十五夜の月見)の折、わが殿(※信友)を末森城の信行どのが訪ねて参った。織田弾正忠家の不穏な動きを殿は危惧されておられる。よもや、守護代である大和家を蔑ろにし、尾張を手中にするのではないか、と」
坂井大膳の視線は、なんとも不快なものだった。
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