第五話 老臣・平手政秀、健在なり!

4/8

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
 名古屋城広間――、彼を迎えた政秀は坂井大膳の真正面に着座、恒興はその斜め後ろに座った。だが信長に会いに来たであろうに、その信長が現れなくても大膳は気にはしていなかった。その大膳の目が、恒興に向く。 「そちらは?」 「織田弾正忠家家臣・(いけ)()(つね)(とし)(いつ)()、池田勝三郎恒興にございます。(じやく)(はい)(もの)ゆえ、ご無礼の断、お許し願いまする」  恒興は、そう言って頭を垂れた。 「して、守護代・信友さまの家臣である貴殿が、若殿に何用でござろう?」 「昨年の(かん)(げつ)(※十五夜の月見)の(おり)、わが殿(※信友)を末森城の(のぶ)(ゆき)どのが訪ねて参った。織田弾正忠家の()(おん)な動きを殿は危惧されておられる。よもや、守護代である大和家を(ないがし)ろにし、尾張を(しゆ)(ちゆう)にするのではないか、と」  坂井大膳の視線は、なんとも不快なものだった。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加