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「政秀の爺め、そんなことを言ったのか」
夕刻――、帰城した信長は馬屋にて愛馬を撫でながら笑った。
「笑っている場合ではありませぬ!」
「確かに見てみたかったな。奴の顔を」
「平手さまなら、奥書院におられますが?」
「坂井大膳という男の顔さ。爺に睨まれて退散したんだろ?」
「さすがは、平手さまにございました」
「あの父上に仕えて、白髪頭になっても俺を追いかけ回す元気な男だ。間違っていることは間違っていると誰であろうと意見する。そういう男だ、爺は」
平手政秀という人物を、主君・信秀の他に見てきた人物がここにいた。
本人に聞かせてやりたい台詞だったが、信長は聞かせたくないようだ。
「私は平手さまのおっしゃったことは正しいと存じます」
未だ残る余憤に、信長が呆れる。
「お前が怒ってどうする?勝三郎。悪口を言われたのは俺なんだろう?」
「だから悔しいんです……!」
「ま、尾張を手中にしたいのは寧ろ、織田信友のほうだと俺は思うがな」
「大殿に挑まれたのも、そのためと……?」
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