第六話 尾張が抱える火種

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第六話 尾張が抱える火種

 美濃・稲葉山城(いなばやまじよう)――、銀世界に彩られた景色を天守で眺めていた帰蝶(きちよう)は、ため息をついた。後数日もすれば、この身は尾張のものとなる。  武将の娘と生まれたからには、味方とする強豪国に嫁がされるのは戦国の習い。  だが彼女が嫁がされるのは、今回が初めてではない。  最初の結婚相手となったのは、美濃国の守護大名である土岐氏一門(ときしいちもん)土岐八郎頼香(ときはちろうよりたか)であった。斎藤道三が土岐家に誓った忠誠を示すため、いわば人質として帰蝶は嫁ぐことになったのである。  しかし、天文十三年に、斎藤道三は尾張国を支配していた織田信秀との戦いの混乱に乗じて、土岐八郎頼香に刺客を送り込み自刃させた。  このとき、帰蝶はわずか十歳であった。  二度目の結婚をしたのは天文十五年、守護大名となった土岐次郎頼純(ときじろうよりずみ)という人物であった。最初に結婚した土岐八郎頼香の(おい)にあたる男である。  しかし、結婚からわずか一年を過ぎた天文十六年、土岐次郎頼純は亡くなる。  果たして今回は、どれだけ続くことやら。
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