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元々尾張は守護大名・斯波氏の守護にあり、その守護代である織田家の勢力下にあったという。しかし応仁の乱にて織田家は分裂、東軍についた大和守家(清洲織田氏)と西軍についた伊勢守家(岩倉織田氏)が戦後の尾張支配を巡って抗争状態となったらしい。
斯波氏は両者を巧みに操縦していたが、やがて実力を失ったという。そんな大和守家から枝分かれした一族が弾正忠家である。
織田信秀はまだ元服前の吉法師に那古野城を譲り、末森城へ移った。
城に残された家臣たちにとって吉法師が主となったわけだが、この吉法師の行動が織田弾正忠家を二分させることになる。
天文十五年、吉法師は元服し名を変える。
織田三郎信長――と。
「恒興、ここにおったか」
恒興が視線を運ぶと、廊にある武将が立っていた。
名を平手政秀――、信秀の代から弾正忠家に仕え、主に外交面で活躍したという。
「如何されましたか? 平手さま」
今や白髪の交じった頭に、顔にも皺が刻まれる歳となっていた政秀だが、この日は眉間にも皺が浮かんでいる。
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