第六話 尾張が抱える火種

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「どうやらふたりとも、アレに心当たりがあるようだな?」 「――信長さまの留守中、守護代大和家の家臣だとい方が置いていかれた南蛮菓子でございます。それがどうして……」  恒興はそう説明するが、答えは聞かなくてもわかる。 「どうやら、毒が仕込まれていたようだな」  信長が、その答えを言いきった。  やはり、守護代・大和家は大人しく引き下がるつもりはなかったらしい。     「若、某の責任でござる。あの男の狙いが読めなかったのは一生の不覚」  広間には、平手政秀も同席していた。  猫の死骸を最初に見つけたのは、信広だったらしい。  異母弟・信長が妻を(めと)るらしいと聞いて、どんな顔をしているか見たくなったという。  彼を出迎えのは、政秀だったようだ。  広間に向かう途中、書院の障子が半分開いていたという。そこで見つけのが猫の死骸と、ひっくり返された黒漆の箱だったという。  おそらく、猫は城壁を越えて入ってきたのだろう。  書院の障子を、締め忘れたこちらの非もあるが。 「爺、お前の所為じゃない」  政秀の悔恨(かいこん)を、信長は(なだ)める 「ですが、若……!」
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