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「そうだぞ、平手。まさか守護代が暗殺を企てるとは誰も思わん。しかも狙った相手が、信長だぞ?末森城の父上や勘十郎(※信行)ではなく、だ」
呵々と笑う信広に、政秀は複雑な顔をしていた。
「信長さま、この件を大殿には?」
恒興の問いかけに、信長は即答した。
「いや、末森城には一切報せるな。勘十郎が傷つく」
黒漆の箱に入っていた南蛮菓子は、勘十郎こと信行が信長のためにと用意したものだという。信行は、恒興と同じ十四歳。兄をどうかしようなど思うだろうか。
信長もそう思っているようで、末森城には騒ぎは報せるという。
確かに自分の知らない所で兄の暗殺が行われ、それに自分の名が持ち出されているとすれば、信行は傷つくだろう。
「信長。この際、はっきりと守護代に釘を刺しておくべきじゃないのか?」
「――というと? 異母兄上」
「守護代がなにを考えているか、わからないほどのうつけじゃあるまい?」
信長は何も言わない。
彼は信広の前でも、本心を隠している。
なにゆえ、こうも守護代・織田大和家が弾正忠家に介入してくるのか。しかも今度は、信長暗殺まで企てた。
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