第六話 尾張が抱える火種

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 政秀曰く、織田信秀に守護代である大和家に取って代わろうという意思はないという。事を起こせば、尾張は身内同士の戦いとなる。いくら下剋上が(まか)り通る世とはいえ、尾張の和平を望んでいるだろう。  信長とて同じだ。周りには何も語らないが、恒興だけは彼の本心を聞いている。  ――いつか、この尾張(くに)を一つにする!    それは決して守護代を潰すことではないと、恒興は理解する。  信長曰く、織田大和家は信行を弾正忠家の後継者に推しているらしい。守護代・織田信友にとって操りやすい人物らしい。  もともと弾正忠家は大和家からの分家筋にして、臣下。それが信秀の代にして、弾正忠家の勢力が大きくなった。これを信友は、脅威に感じたのだろう。  いつもの信長なら、大和家がなにか言ってきても聞き流してきたが。 「勝三郎、馬の用意だ」 「どちらへ」 「喧嘩を売りに行く」  信長は怒っていた。  彼は弟・信行を可愛がっている。  その信行の名を使われたことに、怒っているのだろう。  毒を仕込んだのは守護代・信友の命令か、それとも坂井大膳ら家臣の独断か、守護代としては少々やり過ぎである。
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