第六話 尾張が抱える火種

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 どうやら男も、楓がただの女とは見ていなかったようだ。 「…………」 「ま、いい。ただ、この尾張は少しばかり物騒でな。懐の懐剣一つじゃ太刀打ちできんぞ?」 「あなたは何者です?」 「尾張・織田弾正忠家、織田三郎信長――」  男の名乗りに、楓は瞠目(どうもく)した。  ――この男が……、織田信長。  まさか、ここで会うとは。  楓は信長と別れるまで、言葉を発せられなかった。      一方、その尾張下四郡守護代・織田大和家では――。 「おのれ! あのうつけめっ!!」  守護代にして大和家当主・織田信友は、(さかずき)を床に叩きつけた。  信長はいきなりやってきたかと思えば、弾正忠家のことに口を出すなという。主君筋である守護代に向かってにだ。 「殿、なにゆえ信長をきにされまする? あのうつけに、尾張が纏められる筈がございませぬ。聞けば家臣たちも呆れているとか」  信友の前にいたのは、坂井大膳である。 「黙れ、大膳! そなたがあやつを始末し損なうゆえに、この城に乗り込まれたのではないか!? お陰で虎の目を覚ましてしもうた」 「虎の目……?」
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