14人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「若(※信長)を探しておるのだが、そなた一緒ではないのか?」
「申し訳ございません。今朝お部屋に伺ったのですがいらっしゃらず……」
「それっきり会うておらぬというわけか……」
政秀はそう言って嘆息した。
恒興は小姓としてなんたる様かと叱責されるかと思ったが、信長に振り回されているのは常、傅役である政秀もその一人だが、彼にすれば責任は恒興より重い。
政秀を信長の傅役に指名したのは、信秀だという。
彼は信長を織田弾正忠家の跡取りとして、立派に養育することを旨としている。
だがその信長といえば、吉法師と名乗っていた頃からすることなすこと常軌を脱し、今や『尾張のうつけ』と広まっている。
叱責されるのは信長ではなく、傅役である政秀なのである。
このままでは、信長が織田弾正忠家当主となれるか非常に危うい。
世は下剋上、実力があるものが出世する世。
最初のコメントを投稿しよう!